ありがとう、おやすみ/ホロウ・シカエルボク
 
つだ
いつだってそう言ってきた
でも、ぼくもきみも
そんな言葉に
すっかり慣れてしまって
いつかしら
そんなこと
本当だって思わなくなっていたのかもな


ぼくらはみんな
それが叶わないと知りながら
だれかを信じようとする
さようなら、さようなら
ほどよい右手の振りかただけが
妙に上手になってしまったと気づいた夕方
あのとき、ぼくのそばに
どんな武器も見当たらなくて本当によかった


いつからだろう
音楽が流れていないと
眠ることが出来なくなったのは
しんとすると
余計な音が聞こえてしまうから
連れて行ってくれるものを求めてしまう
表通りを走り過ぎる車の
ちょっと非常識なボリュームで流れているラジオが
午前零時を告げながら遠くなって行った
そういうのって、ちょっと
珍しい出来事だと思うんだけど


いつの日か
懐かしい絵画のように
語れるといいね
眠りはまだ遠いみたいだけど
もしか言いそびれたりしないように
おやすみを言うことにするよ
そう
黙って
右手を静かに振るみたいにね

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