スーパーカブ讃歌/梅昆布茶
 
日常の荷役をおおかた肩代わりしてくれる
温厚でいちばん忍耐強い乗り物なんだなこれが

人の手のはいらない耕地は荒れてゆく
自然や野生の支配は確実かつ迅速で

素早くスマートな文明的決済の哀しみと
新宿のアルミ缶を集めるホームレスとの落差を

木偶の坊政権から金権政権へ移ろうとも
スーパーカブは決して疾走(もともとできないのだが)しないで

ろくな舗装もされない路面と対話しながら
主人への愚痴を排気とともにゆっくりと吐き出しながら

言語技術などいらない歌でもうたって
走り続けるのかもしれないのだから





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