ロックダウン/やまうちあつし
 
つて巨大地震の被災地で目撃した
災害発生当日の夜空であった
大規模な停電による漆黒の夜空に
遠慮なく散りばめられた星星
西では石油コンビナートの爆発が続き
夜空を真っ赤に染め上げていた
多くの生命が失われ
住居や財産をなくした者も数知れず
にもかかわらず
心身はふるえた
人智を越えたものの中にのみ
見いだされる
おそれと表裏一体の
なにか
人々がおそれおののく
巨大都市の中枢にあって
知事の身の内には
あの日の夜空が充満していた
ふと
視線を感じ
窓の外に目を向けると
向かいのビルの屋上に
黒ヒョウがいる
ひと気ない首都の夜
高層ビルの屋上で
こち
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