九月 昼/夜/塔野夏子
 
九月のしずかなあかるさは
透明な翳りを含んで
その中に点々と
露草の青 浮かんで

波紋するさよならを
心に溜めて
やわらかく孤立しながら
佇む意識の彼方に
ほそい岬
それは空へ帰る道のような

残された文字たちの群れが
手のなかでざわめいていても
それを読むのはまだ先でしょう

やがて夜が来て
銀にふるえる虫の音に
波紋するさよならが包まれて

それを聴きながら
やわらかな孤立にくるまれながら
ゆっくりと眠りに落ちてゆきます


戻る   Point(6)