核/ホロウ・シカエルボク
 

砂利道に零れ落ちた戯言は瞬く間に無に還り、舌癌の男の歌声がドラム缶に飲み込まれる、機能食品の後味だけが喉笛の入口でオシログラフの針を揺らす、ボトルネックプレイのブルース、環状線の高架の脚で錆びのような染みに変わる、町工場の廃墟の割れ落ちた窓の中からグラインダーの残響、狂気は路地裏の羊歯に張り付いた芋虫に憑依し、しゃれこうべ模様の羽を持つ蝶になる、ミクロネシアの流行病の話、暑い国のバグは決まって表皮を焼き尽くす、通り過ぎた散歩中の老人が大音量で鳴らしていたトランジスタ・ラジオからは、得体のしれないワクチンの効能について繰り広げられる議論、熱心な無関心を押し売りする関係者、矛先を間違える被害者の群
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