渡し守/帆場蔵人
私の果樹園には
今にも倒れそうに
傾いだ梅の木がある
心が荒れて時化るときその木を思い出す
海から河へ河から海、海から流れる川と
言ったのは誰だったろうか、渡し守の唄か
心が時化ている荒々しい白波
白々しい白波、心は海のよう
凪いだままではいられない
鴎も海猫も飛びたったまま
嵐が過ぎ去るまで水平線と
仲違いしている、嵐に祈る
空と海のあはいが
帰ってくるように
境い目で手を繋ぐ
遠い場所に笑いが転がっている
心が時化ている鳥を追う暇もない
虚舟にのせられ、ただ祈るだけだ
渡し守たちがたくさんの祈りを捧げている
水平線のみえない畑に漂着した梅の木は傾いだまま
根を張り実をつけた、時には空も晴れているだろう
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