見分けのつかない分身/末下りょう
 


話しそびれてしまって浅い水路で風がわらう


ぼくたちのてのひらで火傷した蛙の


フリーズと


ラケットを肩にかけた生徒たちが


それぞれの家に帰る


ざわめき



夕映えを羽織るきみが振り向いて手を振った


田んぼ道


薄く黒ずんでいく地平線を背に


甦える体温をこぼしながら


遠く浮かび上がる足跡の先に見分けのつかない分身が


立っている



どこへ帰るの?


聞きそびれてしまって浅い水路でまた風がわらう


きみは誰かの分身のように遠ざかり


やがて見分けのつかない夜にいなくなる


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