鳥の息 / ある女の子篇/末下りょう
からだを乾かしている女がいた
塩素消毒液のにおいのするプールと生臭い雨が混ざる音をフェンスの向こうに聞いて
雨雲のような野良猫がそこより過去というときがない朽ちた垣根から現れて 陽の沈むところをなめ濡らし 音がなければ意味の生まれない片隅に首をすりつけて耳をそばだて 大きすぎて大きさのないほうに消えていった夏
わたしの手の中で鳥が息を引き取りつめたくなったときから
わたしはその鳥の息の中で生きている
アマミヤを握りしめて
きみに斬りかかったあの夏の日から
戻る 編 削 Point(2)