避暑地の恋/
藤原絵理子
きみの笑顔が欲しくて
生きてきたのかもしれない
きみの苦しみは あたしの外側にある
その時が流れ去るのを待っているしかない
いくら寄り添ってもたどりつけない
深い井戸の底から見上げた
月の色はよそよそしくて
そのことに苛立つ
高原の夏は なくしたものを
あざやかな光で思い出させる 透きとおった
火山の煙にのせて 手の届かないところへ
むかしの子供らが蜻蛉を追いかける
わすれぐさのみかんの色は
夏の陽ざしにやけた火山の匂いがする
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