山の中の孤独/山人
 
 八月十五日、登山道の除草を開始した。四カ所の登山道コースを一人で受け持っている。トータル十日以上はかかるだろう。
 人は「大変ですね」と言う。しかし、大変なことなど何一つない。思い悩むことはないし、他者に頭を下げる必要もない。上司の顔色をうかがう必要もない。重い荷を背負い、所定位置から草を刈り始めるだけで良いし、ゴールまで刈ればよいだけだ。
 何が厭かと言えば、孤独の中にいると言うことだろう。朝、車に乗り込む瞬間から孤独は始まる。現場に着き、それぞれの道具ですらも孤独であり、孤独一式を一個のザックに詰め込んで歩きはじめる。スパイク長靴のザリッという摩擦音ですら孤独を演出してくれる。
 単調
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