砂浜でことばを砕く/かんな
砂浜であたたかな光を浴びながら
私たちは貝殻に閉じ込めたことばを砕いている
細かい粒子がキラキラしては手のひらで
掴み切れないものをかろうじて掻き集めて拾っている
足の裏に微かな熱を感じるときは
こどくを振り払うように
一歩一歩重たい足を動かしてはもがく
荒波に深い渦に飲み込まれたい衝動は
いつも隣に歩いているから
いっそ手をつないでしまえばいい
なんでどうしてと
小石を繰り返し投げつける水面に
映るのはただ私で ただ私たちだ
いつだって死にたい いつだって死にきれない
いつだって生きてはいかれないから
いつだって生きたいと私は願う 私たちは祈る
それはまったく届かないみたいに
星の数だけ儚く光り 砂の粒の数だけ脆く崩れる
苦しみは表し切れない この祈りは願いは届かない
わかってもなお
そこには伝えるためのことばがある
だから私たちは今も
砂浜でことばを砕くんだろう
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