アポロンの眼/天寧
 
ディオニソスに魅入られ
葡萄の蔓の絡まる酒杯を享けた
昏い眼光を滾らせ
無形の岩漿を地に撒いた

ピンセットで標本台に載せる
一分の狂いなき手つきでつがえた
アポロンの銀の矢が
杯を貫き
絶対零度の衝撃が
またたく間に岩漿をかためた

射手を仰ぎみれば
その瞳は日輪のようにまばゆく
世界を統べている
畏れおののいて わたしはひれ伏した……
一切を留める
精緻な指捌きに口づけて
授かった天秤を掲げると
岩漿に言葉があてがわれる代わりに
凍りついた

かれの輝く瞳が わたしを射!
その片割れはわたしに嵌め込まれた

  ――音は鎮まった
  ――音は
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