輪郭の明確な分からなさ/末下りょう
オセアニアの少女たちのように 裸足でさまよい 歩くことを覚えた
夏の
ネオンに透き通る
それぞれの肌
色鮮やかな光の波に漂うビジネスマンと ふれた肩
ゴムボールを落とした子供を
飛び越えて
風と舞う
時計塔の下 美しい妊婦が頬張るアイスクリームの 甘い匂いのなかを
時間が通りすぎる気配を感じて
見つめ合う
それぞれの瞳
スマートフォンから透明な水滴が生まれて
文字を濡らす
美しい
鳥の死骸 遠くの 飛行機の音
遠のくように 降りそそぐ
夏の星座
響くサイレン
カフェテラスの笑い声
マンホールから聞こえた 水のせせらぎを 秘かに讃えた
無言に回収される重力が 唇のうえで燃えさかる
街並みにはためく 星座の影
路上の森
夜の蚊
あなたの残り香 仄かに
横断歩道を塞ぐ
タクシー
この夜に 骨はなく
やわらかな 輪郭の明確な分からなさに 揺れる
夢もなく
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