夜にそなえる/末下りょう
 
蝉の鳴き声と赤ん坊の泣き声がこだます 夏の朝に
いくつめかの台風の いくつもの風が小さく渦巻いている

まだ
窓辺の風鈴を鳴らすこともなく

起き抜けの肌を
割れた鏡のような朝の破片に
微かに切らせて

畳のへりで 毛づくろいする風を踏まないよう
一応の夜にそなえる
戻る   Point(5)