ひょうはくされる切符/帆場蔵人
(白壁につたう蔦を歌うから壊れたカメラうつらない右眼)
朝が来る鉄道路線よ、そろそろ別れのあいさつをしようか
町を囲む白壁を跨いで夜をさすらう巨人たちは去っていった
やがて町は空梅雨の笑い声に呑まれて砂漠と化して誰もが
心地よくねむるなかで 温かな砂の重みに 嘔吐した
砂になれずひかれたものたちの血でできた川へと
白壁の蔦を剥がしながら流れて行きたかったのだ
落書き、悪戯書き、剥落、とても流麗な文字だった
『酔いが覚めたらきみはアンドロイドになれる』
誰かに譲ってばかりで右眼さへ
なくなってしまった、俺は壊れた
カメラと一体化して、蔦をつたい歩く
蔦は
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