暗い道/佐々宝砂
急がなきゃ。
と思うのだけど暗い。
思うように進めない。
あたりはいちめんの草むら、猫じゃらし、
ときどきひょいとバッタが飛ぶ、
川の向こうには何かが明滅している、しかし
その光は全く地を照らすことがない。
帰らなくては。
でも。
家はどこだろう。
わからないけど歩いてゆく。
暗い道だ。
くらあい道だ。
星も月もない空は曇っているのか、
それとも月も星もどこか遠くに去ってしまったのか、
しかし、闇に閉ざされた空には
確かに何かがある、か、いる、か、する気配。
寒い。
半袖から覗く腕には蚊の食い跡。
いまはきっと夏だと思う。
で
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