温度過去形/水宮うみ
過去形の歩き方で温い無音の影になって朝を待っている。
きみが手を振ったら発光するみたいに約束を喉に沈めた春、表に出さない感情を分かり合わない、脆く引き摺るわたしの曇った声を憶えている。
この世界の全てを好きにならない利き手は問いの途中で、きみの怒りがわたしを勘違いすることなく時計の裏で燃えているのなら、この脳裏が冷たくても良いと思った。
青空のつまらなさを内部に話しても、会話にはしてくれない遠く淡い眼差しの誰かだった、きみは、きみをいつまでも言葉にしない夜の手すりに星が伝わってきた水温と一緒に笑っていて、そのことが懐かしい。
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