詩の日めくり 二〇一六年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
年十一月三十日 「速度が誤る。」


買って来た微小嵐を
コップのなかに入れておいたら
仮死状態のジジイが勝手に散歩につれていきやがって
おのれ

バルザック
完全無欠の夜は調べたか
ああ
なにもかも
ぼくが人間をやめたせいで
頭のなかの鐘が鳴りっぱなし

興奮状態の皮膚が
ぴりぴり震えがとまらないのだっちゃ
よかったね
最高傑作
見事に化けて出てくる夜毎の金魚の幽霊が

人間やめますか
ぼくの箱庭
紅はこべ
驚いたふりをして
人間やめました
手には触れるな
速度が誤る
サン・テグジュペリ
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