ありがたや/服部 剛
 
トイレットペ−パーの残りを
使いきり、ちんと鼻をかむ 

残った芯に
印刷された ありがとうございます
の文字に
僕も呟く ありがとう

最近は鼻づまりがひどくて
なかなか寝つけずしんどかったが
昨夜は鼻うがいが功を奏して
すっきり、目が覚めた

ああふつうに
呼吸できるのは
ありがたや

僕は忘れていた
日々無数の あたりまえ に
支えられ、立っていること

ありがたや
妻と息子と今日会う誰かに
食事とトイレと布団に
この詩を書くペンを作った人に
あの日の挫折に
時々うまくいく瞬間に
五文字の 念 をおくります

いつか−−この人生に
ふかく頭(こうべ)を垂れる日まで
続いてゆく道の途中

この両手に受け取る
今日という一日







戻る   Point(5)