ケロケロケロイド/
たいら
忘れん坊のくせにいやなことだけ憶えている
五感全てで憶えている
骨折したときの痛みとか
ギプスを外したときの堪え難い臭いとか
失恋したときの痛みとか
一人取り残された部屋に差す夕陽の眩しさとか
きっとこれらは傷なんだ
血が滲んで瘡蓋になって
漸く治ったと思ったら
醜く残るケロイドだ
たまに痒くなって掻き毟る度に思い出す
そんな傷なんだ
一生引き摺って
一生引っ掻いて
あのときは痛かった
とても辛かった、と
笑うための傷なんだ。
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