ベランダの男/マッドビースト
 

 男が叫んでいる休日の朝のベランダで
 しかし苦悩は痛みにならず
 声は音にはならず 
 光に砕けてのみこまれていく
 無関心な春の晴天に
 
 盛りを過ぎた桜が嵐のように散っていったのは
 そんな日々に耐えられなかったから
 路傍で踏みつけられた花びらは
 泥に汚れてしかし誰も戻ろうとはしない
  
 ベランダの男は
 可哀想なほどにいよいよ大きく叫ぶ
 相変わらず無音の叫びを
 しかし大きく口を開く様は
 満開の桜のようで見栄えがいい
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