天気予報は北上を続けている/山下ヤモリ
歩みを止めてしまったから
応募者多数で抽選開始
ひとりまたひとり
僕の右側を北上していく
懺悔します
僕は君が
先んじて北上しないことを願っていました
僕は
僕は僕は俺は
この俺は次第に正確性を増しながら北上したいのです
それでも応募者多数であったので
北上ができるのは年に数十人
みんな抽選が待ちきれなくなって
右側の列に踏み込んで
右側の列を北上していく
そこにあいつの姿もあったので
たまらず俺も
右側の列に踏み込んで
右側の列を北上していく
俺が前方でお前は後方でしょ?
右側通行の列が完全に歩みを止めちまったけど
自分が立ち止まっていることにすら気付けねえ俺らは
今日も右側通行の列の中
その場駆け足を続け
いつまで経ってもこの世界の意味を正確に掴めない
天気予報は次第に正確性を増しながら北上を続けている
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