理解可能/紀ノ川つかさ
世の中は壊れていった
人々が理解可能を捨てた日から
誰も彼も捨ててしまった
理解可能を捨ててしまった
自分は心優しい人間だと自負する
言葉の使い手までが口にしなくなった
長年の闘争の中で
妥協を強いられてきた
車いすの弱者が
無人駅まで電車で行きたいから
今すぐ人を派遣しろと叫び続ける
妥協はさらなる敗北につながる
だから叫び続けた
しかし無理な注文だ
多くの賛同も得られない
だがしかしこれは理解可能だ
そこには理解可能がある
しかし人はもう
冷たい言葉しか浴びせない
あんなのはただのクレーマーだ
弱者だなどとは笑わせる
戦争に散った魂は
あの神
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)