シャッターだけが降り注いでいた/komasen333
 

ひまわりを背に
端正な顔立ちがしっとりと崩れてゆく
シャッターの音が
シャッターの音だけが
あたり一面に 静かに 降り注いでゆく

火曜の午後
思いつくまま講義をすっぽかし
キミを連れてやって来た
壮大なひまわり畑

夏はまだまだこれからと
自分で自分に言い聞かせたくて
雑誌カメラマンを真似て
その儚さを 永遠にしようと想った

振り切るように
思い出すように
ふいに走り出すなめらかな被写体
その姿を追ううちに
撮ることが どんどんカタルシスに

どこに行くかさえ聞かず
黙ってついてきて
モデルよりモデルらしい
モデル然とした振る舞いを始めた時
久しぶりに
その全身から”女”を感じた
ため息を忘れるほど”女”を感じた

汗なのか涙なのか
よくわからないものが
その頬を この頬を つたってゆく

シャッターの音が
シャッターの音だけが
この葛藤を縫い ひまわりを潤してゆく



( 第46回 多治見市文芸祭 詩部門 入選 )
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