どこまでも春の日/帆場蔵人
水面をうねり進むのは
中州と呼ばれているものだ
息継ぎもなく川を這う
その背で
菜花の黄が
もえている
微かにひかる
ガラス片
あれは
人の手から
逃れて
中州の鱗に
転じて跳ねて
軽や
かに
流れ
それは
とても
春、
い ざ
蠢 て る 花 ざざ 、ざ ざ、ざ
い 菜 ざ
息継ぎもなく川を這う、ガラスの鱗、菜の色
風と水を呑み干し、中州はときにひとも呑む
背の上で手を振っている、あれは、誰だろう
流れ流れて丸くなった
石、悠久に顔は削れた
のか、それともそれとも……
中州が身をくねらせる
あゝ、春ですね、石切りをする子どもたち
中州まで届くだろうか、いつかの春のように
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