ただ、風に揺らぐように/ホロウ・シカエルボク
 
光線は不規則にそこかしこで歪み、まるで意識的になにかを照らすまいと決めているみたいに見えた、ガラス窓の抜け落ちた巨大な長方形の穴の外は無数の騎士たちが剣を翳しているかのような鋭角な木々の枝で遮られているのだ、断末魔のような声で鳴く鳥がその枝のどこかに居るようで、くっきりと浮かび上がる音といえばそんなものくらいだった、もとは木材かなにかの内装が施されていたのかもしれないが、途方もない年月が過ぎたのだろういまとなっては、ただただ剥き出しのコンクリートが手の込んだ墓標のように突き立って居るだけだった、時間はようやく夜から朝に完全に入れ替わったばかりで、初夏といえど山頂では肌寒さすら感じるほどだった、どこ
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