詩の日めくり 二〇一六年三月一日─三十一日/田中宏輔
 

手の指が
顔の皮膚が
血まみれの巌の上にへばりついている
巌にへばりついた
血まみれの指
巌にへばりついた
血まみれの顔
こぼれ落ちる歯や爪たち
コロコロと転げまわる
百万の彼
寄せては返し
返しては寄せる彼の身体
彼の身体がひくと残る
無数の手の跡
彼の手が引っ掻く砂の形
壊れては修復される
無数の傷跡


寄せては返す彼。?

寄せては返し
返しては寄せる彼
お目当ての彼女のマンションの駐輪場で
彼は寄せては返し
返しては寄せる
駐輪場の小さい明かりの下で
百万の彼の身体が
コロコロ
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