サイダーウォーター/捨持
物持ちのいい彼が わたしに向かって なにか言いたげで
もう そこには何もないのに なにか言いかけて 終わる
炭酸のきれた サイダーウォーターは ずっとこのままにして
わたしのそばから 離れないようにしておく
わたしの口の中に この朝の疲れが オレンジシュースと一緒に混ざる
まさぐり 疲れだけを取り出そうとしても そんなに簡単にはいかない
トイレの水が とめどもなく 流れている
このまま バスに乗ってこの水の底にある つまらない腐ったものを
物持ちのいい彼に変わって わたしが 見つけだすことになっているのかもしれない
この感情を 物持ちのいい彼に 簡単に伝えていこうとしても
わけのわからない 偏見が混じった形容詞が邪魔をして 本当のことが言えない
ただわたしは この物持ちのいい彼のために
時間を使い 時には この炭酸がきれたサイダーウォーターを使い
わずかな 優しさで 声を 息を
忘れないようにと
時間が足りない
炭酸がすべて ぬけるまで
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