アルビノ/佐々宝砂
 
そのとき私は十六歳で
まだ何も罪は犯していないと思っていた

電車に乗って席に座ろうとしても空いていなかったので
つり革をつかんだ
そして
向き合った席にいる人の姿に
私は驚いて
目が離せなくなった

その人の髪はまっしろだった
肌も白かった
まつげまで白かった
まっしろなのに日本人の顔をしていた
その人は男の人で
眠っていて
うっすらといびきをかいていた

知らない人をこんなに注視してはいけないだろう
ということは私にもわかっていた

でもその人は美しかった

その人は眠っているので
じっくり見ても怒られないだろうと思って
私は自分が降りる駅までずっと
その人の白いまつげを見ていた

罪だったと思っている
罪であろう
私は罪人である

あの人はとても美しかった
それはあの人の罪ではない
そして私はあの人の瞳の色を知らない
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