春のからだ/木立 悟
 



脱ぐときは背中から脱ぐ春近し


目薬のまばたき世界を巡りゆく


歯の奥の穴に詰め込む笑いかな


にやにやと胃がさげすむ日空は青


とどこおる想い手のひら解きほぐす


くちびるに早咲きの舞しのばせて


空ひろくあふれるほどに舌にがし


いつまでも夕焼けに棲む左の目


消えかけたうなじの行方照らす道


春に降る春だけに降る花の髪







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