たそがれメセナ/あらい
く わらえていた)
のぞいてごらんよ、
各駅停車の開かれた扉から人々はゆきかえりを繰り返している。
その輪を潜り抜けて奥の座席に腰を据えた初老の男の前に、
白亜の翅を抱いた寂れた女がふらふらと腰を下ろした
明いた隙間に身を寄せたと云っても過言ではない
やつれた少女のようでもあり
鏤められた光だけ吸い込んだような眼を滑らせ、
荷ひとつも持たず特に語る様子もなく、身を寄せたのだと
(お前は知っているのかい)
この水葬の楽団は、あぶくを吐き続ける玩具の出目金ども。
しばし、
ひらつかせた、表皮は解けはじめていた
(投棄の霜柱はしゃんと刺さっていたのか)
甘い蜜をしゃく
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