ネル/はるな
ネルは名前のようにそこにあってくたびれて やさしかった
ひんやりしてあたたかかったし やわらかで 強かった
夜が来て朝が来る
自分が行けるところまで水を追いかけてみたかったのだ
なにものかが産まれて育っていく 世界じゅうのあらゆるところで
終わりつづけている
なにかひとつでよい 瞬間というものをみたかったのだ
暗闇はひきのばされて
眠りは うすべったいクリームのようになってしまった
昼間世界は干あがって
だからビルは増殖した
自分が行けるところまで行けたためしがなかった
指の先まででよかったのに
ないものねだりをしてしまった
壁のむこうに 朝があると思うのに
壁がどこにあるかもわからない
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