潮風/妻咲邦香
希望は罪かも知れませんが
止められなかったのも事実
急ブレーキの跡が生々しいです
轢いてしまった感触だけがあって
亡骸は何処にもありません
私は空を見上げます
制限速度は誰のためにあるのか?
少なくとも私には必要ありません
私は私のぐったりした身体を乗せて
今日も湾岸線を走ります
フロントガラスに雨が突き刺さるので「もっと届け」と叫びます
そして少しだけ窓を開けます
雨粒はみんな中に入って来たがります
不幸は武器かも知れませんが
暖かいものを含んでいます
嬉し涙はみんな嘘です
本当は手放したい順番が見つからないのです
どれだけ探しても、欠けてしまったピース
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