春、立つ/平井容子
1.春霞
まだ見ぬ窓は
美しいだけで意味を含まない
詩集のようでした
干からびた紅茶のつじつまが合うころ
存在はただ
うすぼんやりとした夕暮れをむかえ
ときに遠ざけたいほど臭かった
草木が萌える音はもはや吐き気に近く、間近で触れたまぶたは、夢のように冷たくはないかも
2.バブルティー(2)
忘れ形見みたいな嘘を数える模型部だけど
ひとりひとり
ちがった内臓をかくして笑っている
ときおり甘いのは気のせいで
気がつけばまた動悸する
急げこの矛盾を飲み干せや、尊し
3.500w、2分
冷蔵庫で眠りたいけど詰まっているから
脳が霜をこばむから
今日もむだにあたためて泣いている
まるでわたしだけが
世界中でたったひとりキスを知らないみたいに
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