ゼノンの雨粒/
大覚アキラ
雨粒が落ちるのとほぼ同じスピードで
わたしも落ちていっている
雨粒とわたしの相対的な速度は
限りなくゼロに近く
わたしの周りで静止した無数の雨粒は
刹那と永劫の境界線上に
ありえないバランスで固定されていて
水晶のような雨粒のそのひとつひとつに
気が遠くなるほどの丁寧さで
わたしは言葉を書き込んでいくのだ
二分法的には決して訪れることのない
全てが砕け散ってしまう瞬間を
いつまでも待ち続けながら
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