ファウスト・コンタクト/二宮和樹
不意に襲って来た
過去の亡霊
無きものとした苦悩
何がこの恐れを抱かせたか
悩ましいこの病だれのとばっちり
あぁこの瞬間を抜け
私は恐れと対峙する
やむなく陥った澱を
捨てるのでなく向かい会おうと心を広げる
闇の淵とは悩みの最中で
一体どう払ったものかと呻吟もするが
私には縋るものがある
成してきた豊かさへの希求
大いなる意志への眼差しを
この手で抱き
ここから空へと向かう
まるで、人が生きるのが当たり前のように
そうして、ゲーテに似た懊悩が止む
何をばと求めた過去の歴史
恐らくは自らに水をやり
恐らくは自らに陽を感じさせ
立ち向かうは奈辺の矢じりか
共にあった去りゆく友も
共にあった理解したもう愛も
いつか問えるのだ
この地球という小さくも大きな大地に
いつしか問えるのだ
私は何者でどこから来、どこへ帰るのかを
やましき淵はもう手から抜け落ちた
私はこの日々に向き合う
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