月世界の旅行者/ホロウ・シカエルボク
 
というものが感じられない気がするんだ、なにもかも押し入れに突っ込む代わりに捨てているだけじゃないか、俺は滅多にものを捨てない、あれこれ試してみれば、ものに囲まれながら快適に生きることだって出来る、模索こそが重要なファクターなのさ、本棚やラックの使い方はひとつではないことを、生活の中で学んでいくべきだ、すべてを抱え込んで生きるんだという覚悟の示し方だ、どうして楽な方にしか流行は動かないんだろう、世の中はいつしか、誰も何も持論というものを持たないゼリーみたいな流動体になってしまうのかもしれないな、水のような清らかさはないんだ、どろんとしてさ、よどんだ感じなんだよな、朝食の皿を洗う、フレームだけの皿置き
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