月世界の旅行者/ホロウ・シカエルボク
 
夜明け前、くすんだ窓ガラスは、まだ覚めやらぬ俺を映し、見覚えのない拳の傷、戯れに噛んで夢の名残を押しやる、退屈だけがいつも、上質に仕上がっていく、こんな朝にもう一度目を閉じたら、多分すべてがお終いに走り出してしまう、だから、俺の叫びはこうして量産されていく、知識と教養に任せて見栄えのいい言葉を並べてる連中には、きっと、逆立ちしても分かることはないだろう、こだわりを持つのは悪いことじゃない、でもそれは自分の為だけにしなくちゃいけない、ストイックを他人に強要し始めたやつは、もうそれ以上先へ進むことは出来ないよ、窓を開けて、シャツを脱ぐ、震えが止まらなくなるまでそうして、時雨交じりの風を浴びている、時折
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