ブルースを殺(バラ)せ/ホロウ・シカエルボク
鼻歌は
ド♯がどうにも上手く出せなくて
メロディーは誤植した看板みたいになった
でもギャラリーなんかいなかったし
空は穏やかに晴れていたから
俺としてはそれでも悪くはなかった
良く出来た結果が
良く出来た気分を作るわけじゃない
ちょっと外してるくらいが
居心地がいい時だってある
いつも
俺が座りたい椅子に
しょっちゅう腰を下ろしている太った草臥れた男がいる
日曜とか
祝日には
必ずそこに腰を下ろしている
自転車で朝早くに来て
夕方までたぶんずっと
そこで腰を下ろしている
六十を少し過ぎたくらいだろうか
眠ったり
スマホを眺めていたりしている
いつもダ
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