妊娠/葉leaf
まだ呼ばれていない名前、いまだ触れられていない身体、いまだ喚び起こされない精神、それが三つ目の中心、つまり二人目の君だ。
二人目の君は一人目の君の無限の宇宙から可能性を貪欲に摂取している。ありったけの可能性を詰め込んでいっぱいになった存在が人なのだから、可能性を一生かけて消費しつくすのが人なのだから、この胎児の時期に無限に可能性を蓄えなければならない。そしていま二人目の君自身も一個の可能性として存在している。君の存在は幻影のように投射されるだけだ。
確実でない君へそれでも確実な愛と言葉を与え続けること。僕たちは既成の世界から未生の世界へとすべてのものを変換する。会話は包容に、食事は羊水に、遊技は胎動に変換して君の存在の確実さを濃くしていく。いつか生まれ出るそのことさえ定かでない君へ、それでも僕たちはありったけの定かさで、ありったけの確かさで、未生の宇宙から既成の宇宙への跳躍を、激しい出生を、見守る眼の色彩は澄み渡っている。
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