いつもの部屋/後期
 
きく見えて薄気味が悪い」「目ん玉に止まっていく奴もいるから、とても痛くて眠れやしない」「こいつ等は、みんな君の言葉だ」「どうか、何とかしてくれないか!」と背を叩いてくる。その拳の感触で目を醒ました。いつもの部屋にいる。大きなラジオは勿論無い。目を醒ますと、自分はいつものこの部屋にいる。この部屋を経由して、別の部屋へ移動する。時刻表が、枕元に置いてある。捲りながら、耳が当たり前の大きさに戻っている次元の中で身体が起きる。拳を軽く作り、背中に押し当てる。「あれは、僕の言葉なんかじゃない」と叩く。が、背を向けて寝ている男は、まだ目を巨大化させているのだろうか、蝶や蜻蛉が舞う闇に身を預けて、息を繋いでいるのだろうか。拳を解く。時刻表を捲る。と、移動の時間が迫っている事を知る。床を歩いていくと、既に様変わりが始まっていて、走る。が、夢の中にいるようで、自分の足は思うように、足になってくれない。

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