いつもの部屋/後期
いつもの部屋
寝返りのうてる高さに枕を濡らす。身体に比べて耳が異様に巨大化している。右耳だけが。心臓を上にして横になっているので、重さは、苦ではない。耳朶が足先まであり、指で弾力を確かめて、面白がっている。足の親指と人差し指で挟んでみる。挟みながら、足の親指の次の指が、人を差しもしないのに、人差し指なんておかしいのではないかと思っている。暗闇の中には黒い、大きなラジオが浮いている。天井に着く位の長いアンテナが銀色に光ったり消えたりしている。その点滅のリズムが自分の鼓動と重なっては嫌だと呼吸を早めたり止めてみたりしている。が、点滅は呼吸そのものになっている。ラジオから男の声がする。「目が大
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