無花果の木に無花果の実がなる頃に/こたきひろし
 
柿の木には柿の実がなる
栗の木には栗の実が
畑には麦や蕎麦が
田んぼには稲が米を実らした

貧困を絵にしたような暮らしの家は
藁葺きの古くて粗末な佇まい
それでも庭はそれなりにあった

庭の隅には手作りの小屋があって
何羽か鶏を飼っていた
鶏は卵を産む
年の最後辺りには父親はその内の一羽を潰して
夕飯のご馳走にした

周辺は痩せた土地にしがみつくみたいに
農家が点在していたのに
細い道の通りに沿って三軒は並んでいた

その並びは
本宅
新宅
分家
と言う格付けに呼ばれていたが
何代も前の起源で当時は単に隣近所に過ぎなかった

他にも周辺の家々に屋
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