詩の日めくり 二〇一四年六月一日─三十一日/田中宏輔
ゆっくりと漂いながら上昇していった。
魂の縛めを解かれて、父の肉体が昇っていく。
だんだんちいさくなっていく父の姿を見上げながら
ぼくは後ろから母の肩をぎゅっと抱いた。
点のようにまでなり、もう何も見えなくなると
ベッドのほうを見下ろした。
布団の上に汚らしいしみをつくって
ぬらぬらとしている父の魂を
看護婦が手袋をした手でつまみあげると
それをビニール袋の中に入れ
袋の口をきつくしばって
病室の隅に置いてある屑入れの中に入れた。
ぼくと母は、父の魂が入った屑入れを一瞥した。
肉体から離れた魂は、
すぐに腐臭を放って崩れていくのだった。
天国に昇
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