SF/佐々宝砂
からっぽで何にもなかったので
手元に落ちてきたSFを入れてみた
SFの尻尾はもう古ぼけていて
埃をかぶっていたけれど
頭のほうは元気で活きがよくて
これならからっぽも何とかなるかしらと
一時的に充たされた気分になったが
SFの奥にはブラックホールが眠っていて
尻尾も頭も全部飲みこんでしまった
ウロボロスの蛇かよ
と誰に言ったらいいものか
さてどうしようとあたりを見回すと
もうからっぽですらなかった
つまり
殻なり袋なり境界なり
外界とからっぽを区別するものが
確かにあったはずなのだが
もうそんなものもなくなっていた
からっぽですらない
わけのわからないふわふわ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)