帆立貝/
もちはる
冷気の下
殻を閉じたまま
ゆらりゆられてどこへ
重なり合う
箱の中
昨日までは
海の底
敵に襲われ
潮に流されても
二枚殻を武器にして
なかまと共に生きてきた
のに
今日は
俎の上
近づく者には
二枚殻で挟んでも
覚悟の身
殻をこじ開けられても
とどめを刺されても
逃げはしない
ここまで運ばれたのは
これまで生きてきたのは
食べられるためだったのか
殻までは食べられまい
ただ北の海を想いうかべる
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