帆立貝/もちはる
 
冷気の下
殻を閉じたまま
ゆらりゆられてどこへ
重なり合う
箱の中

昨日までは
海の底
敵に襲われ
潮に流されても
二枚殻を武器にして
なかまと共に生きてきた
のに

今日は
俎の上
近づく者には
二枚殻で挟んでも
覚悟の身
殻をこじ開けられても
とどめを刺されても
逃げはしない

ここまで運ばれたのは
これまで生きてきたのは
食べられるためだったのか
殻までは食べられまい
ただ北の海を想いうかべる
戻る   Point(1)