泣き歌は書けなくて/こたきひろし
 
十月の夜の空
星が見えない


昼間なら何の拘りなく空を見上げられるのに
夜になるとそれが出来ない
怖くなってしまうのだ

未確認飛行物体の放つ強烈な光にうたれ
そのまま自分の存在が宇宙船の中に引きずり込まれて
結果
宇宙人の研究材料にされたり
奴隷にされたりしそうな気がしてしまうからだ

たかが夜空を見上げただけで
そんな飛躍した思いになってしまうのは
何かしら自分に精神的な病変が巣をはってしまって
いるのかも知れない

十月の夜の空
星が見えない

台風一過
なのに
空は灰色に変色したままなのだろう

残念な事に空は暗闇に縛られて
灰色を確かめる事が出来ない

そんな訳のわからない空の下にいると
両翼をむしりとられた天使達が
無数に落下して来るような気がしてならない

それら全ての妄想の根源は
神の悪意にみちたしわざなのかも知れない
私を
私だけを標的にした



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