キジバト/山人
キジバトがアスファルトのすき間の
塩化カルシウムを求めてやってきては
車の気配に飛び立つ
その柔軟で頑強な胸筋は
うすく乾いた空気を捉えては
スノーシェードの向こうへと飛んでいく
その屈強な姿を
あなたは見たことがあるだろうか
中空でありながらも硬く軽い骨を持ち
自重の七割がたの胸筋で自らを空中へと飛翔させる
キジバトの眼球は点となり
無表情でありながら
必死に車の前から飛翔してゆく
体が塩分を欲しているが
完ぺきな肉体を持ち
激しい鼓動を打ち
空へと飛んでいくのだ
キジバトは逃げているのではなく
私の眼前でそのありあまるエネルギーを見せつけている
間違いの無い、完膚なき健康を披露し
そのはじける胸筋を見せつけている
キジバトは未来へと飛び
希望へと駆け飛ぶ
空は未だ鉛色で口は押し固められているけれど
キジバトの飛翔は沈殿した苦い泥を
いくぶんか吐き出させてくれる
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