十月/
山人
泳ぎ疲れた川魚の
ため息が水面にうかぶとき
十月は訪れる
他愛もない 言葉のくずを散りばめて
だれもいない山道の清水に流してしまおう
季節は傾斜し 黙り始める
そのはざかいに ぼくたちは生き
昨日の汗は いつのまに乾いている
意味のない視線が とどこおる時
脳はかすかに微動し せつなく揺れる
痛痒いいたみが皮膚に浮き出て
成熟した あきらめをうけとめる
また、十月が来る
口のない冬の前に
いっときの いろどりが踊り
ぼくをしばし 泳がせる
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