涙ヶ丘/平井容子
1.invisible daughter
むきだしのいちじく
きみと呼ぶには
おこがましいほど
きみだった
季節は排水とともに流れる
今月もありがとうございました
2.ロードショー
雲をつかむような話に
爪先が濡れている
悲しいほどおどけた窓に
既製品のカーテンはゆれる
いなくなった人を掻き分けて
進んでいくヨット
ななめに、ななめに
ただまっすぐに
3.処女解体
セックスフレンドと食べる
やきそばとビールを買ったのに
なぜか降り過ごした
ウロボロスです
山手線は
ビルの谷間の中途半端な丸い月
あやしているまろんだ影
反射してもまだ暗い
退屈でもよいのだと叫ぶ
見えない染みが
もはや美しいフレアスカート
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